大きく軽いディスプレイが、空間演出や情報伝達の在り方を変える

 日本武道館や東京ドームなど、多数の観客を収容できる会場で行われるコンサートでは、中央にステージが設けられ、ステージ上部にアーティストの演奏の様子が、遠い客席からでも分かるように大型モニターが設置されることがよくあります。これをオルガノサーキットのディスプレイに置き換えれば、さらに大型の画面を実現し、観客の満足度を高めることが可能になります。

空港や駅などの大空間に掲示されているバナーに置き換えれば、新しい広告需要を喚起することが期待できます。また、緊急時や災害時には乗客に必要な情報をリアルタイムで表示することも可能です

コンサートホールなどに利用すれば、観客の満足度を高めることができます

 中原さんは、「この大型ディスプレイを製品化することによって、デジタルサイネージの世界に新しいソリューションを提供したい」と抱負を語ります。

 例えば、ホテルの窓にこのディスプレイを貼れば、昼間は電源を切って明るい外光を取り込み、夜になればさまざまなシーンを窓に映し出すなど、今までなかった空間演出を行うことが可能になります。軽くて折り曲げることができるので、災害発生時に地域避難所に持ち込み、大型ディスプレイによる「仮設の情報ステーション」のようなものを作ることもできます。そうすれば、避難している人たちにリアルタイムで災害の状況を伝えることが可能です。

 オルガノサーキットがオフィスを置いている東葛テクノプラザは、東京大学柏キャンパスに隣接しているほか、実験装置を設置できる構造にもなっていて、「新規要素技術を応用した製品開発が行いやすい」と中原さんは高く評価しています。さらに、業務改善プログラムなど千葉県主導の支援も充実しています。

 また、ディスプレイ製品はさまざまな要素技術で構成されているため、新規部材、設計技術、特殊な設備など、製品の競争力を高めるためには関連パートナー企業と今後緊密に連携を取っていくことが必要です。「柏の葉の周辺には大学などの研究機関のほか、企業の開発部門なども多く所在しており、今後もそのような機関・部門との協業を模索し、競争力を高めていきたい」と中原さんは考えています。

ホテルの窓にオルガノサーキットのディスプレイを貼り付ければ、新しい空間演出の可能性が広がります

 2021年の製品化というロードマップの実現に向けて、ディスプレイ駆動設計やディスプレイ部品の実装、TFT部材の製造供給などについて、実績と定評のある外部企業の協力を得たり、業務を委託することで合意し、準備は着々と進んでいます。

 来年に延期された東京オリンピック開催を前に、第一号のディスプレイを設置・公開することも決定しました。そこから得られる反響や、市場の要求を反映してさらに製品力に磨きをかけ、日本発の新たな大型ディスプレイを世界に販売していきたいというビジョンを、中原さんは描いています。

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