高精度の抗体作製技術を活用して「不可能」とされた領域を切り拓く 目標は世界レベルの製薬企業

 抗体医薬はヒトの体にもともと含まれているタンパク質から作られるため安全性が高く、開発から承認までの期間が低分子薬に比べて短いことも魅力。村上さんはがんのほかに、潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの神経変性疾患に対する抗体医薬の研究開発にも着手。これらの難治性の病気も将来的には治せるようになると考えています。

柏の葉発のグローバル企業を目指して

 村上さんは2002年に株式会社バイオマトリックス研究所を創業しました。同社は2003年に東葛テクノプラザへ、翌04年に開設されたばかりの東大柏ベンチャープラザにラボを移設しました。一方、村上さんが在籍していた東京理科大学に隣接した6畳一間のアパートで2008年に創業したOMRが東大柏ベンチャープラザに移転したのは2015年。村上さんと柏の葉とのつながりは約18年に及びます。

「2002年頃、私は柏の葉周辺の企業の方を集めた勉強会を行っていたんです。そのうち私自身がベンチャー企業を立ち上げることになり、東葛テクノプラザから入居のお誘いをいただいてここに移ってきました。この周辺には東京理科大学や東京大学など多くの大学があり、大学との提携や共同研究をしやすいことが大きなメリットです」

東大柏ベンチャープラザ内のOMRのラボ。ここでELISA法を採用した新型コロナウイルス抗体検査システムが開発された

 村上さんは、OMRを日本におけるベンチャー企業のビジネスモデルにしたいと考えています。

「現在のOMRは技術開発をし、製薬会社などに導出するビジネスを行っています。しかし、いずれはあらゆる疾患の抗体医薬を作れるようになり、製薬企業に転身して、グローバルに活動したい。欧米にはAppleやAmazonのように数人で始めたベンチャー企業が上場し、数千人規模の大企業になった例が数多くあります。私たちもそんなふうに成長していきたいですね」

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