スマートシティには改善の余地がある。だからこそスマートシティであって、より賢い市民がそこで生まれる

相互のコミュニケーションを促し、透明性を高めることが大事

 思春期に体験した台湾の総統選挙も、その後の自身の活動に大きな影響を与えたとタンさんは振り返ります。1990年代は世界中で爆発的にインターネットが普及した時期です。1995年のWindows95の発売によりインターネットを誰もが使えるようになり、利用者が急増しました。ちょうどその最中の1996年に、中華民国が遷台してから初めての正副総統の直接民選選挙が実施されました。タンさんはこの時に、インターネットと民主主義が台湾の人たちにとって相容れないものではないことに気付きました。

「民主的なシステムを変える前に、オンラインでプロトタイプすることができます。そして、そのプロトタイプがどのような形で日々の民主主義の在り方に寄与できるか、ということに興味を持ちました。オンラインのキャンペーンにも、1996年の総統選挙の時に参加しました。この経験から多くの学びを得ました」

 タンさんは政治において信頼を積み上げてゆくためには相互のコミュニケーションを促し、透明性を高めることが大事だと考えています。そのため、台湾ではブロードバンドアクセスは人権と同じだと断言します。

「台湾ではブロードバンドのアクセスは人権と同じです。ですから台湾の4000メートルの高地でも、遠隔の島にいても、皆さんが10Mbpsというブロードバンド接続を月16米ドルの料金でできる。そのアクセスができない人がいるとすれば、私の大臣としての失策だと思っています。全ての人たちが参加することができる。対面でもオンラインでも。それは権利です。持つものと持たざる者の間の乖離は、ないということです」

世界中でマスクが逼迫する中、E マスクでパニックを防止

 1月にコロナウイルスの感染拡大が世界中で問題になった時、タンさんたちは数値モデルを元に、だいたい台湾全人口の4分の3の人たちがマスクをつけて、手を洗ったりして衛生に配慮すれば、実はワクチンと同じ効果があるということが分かっていたと言います。

 しかし、1月時点では世界中で需要が急増してマスクが逼迫し、台湾の市民もマスクが平等に配布されると信じていませんでした。そこで、タンさんたちが力を注いだのは、マスク在庫不足に伴うパニックが起こることを防ぐことでした。この時、健康保険を担当する衛生福利部中央健康保険署がマスクを販売する薬局の30秒ごとの在庫データをCSV 形式でネット上に公開しました。このデータをもとに多くの企業や技術者が、薬局のマスク在庫の状況が一目で分かるアプリなどを競って公開しました。