生体膜を模倣するポリマーで、医療・ライフサイエンス分野に革新をもたらす

インテリジェント・サーフェス株式会社

インテリジェント・サーフェス代表取締役の切通義弘さん。生体膜を模倣した生体親和性材料「MPCポリマー」の開発を主導しています

インテリジェント・サーフェスは、私たちの体の細胞膜を模倣した、生体親和性材料「MPCポリマー」を開発している企業です。このポリマーでコーティングした機器は、表面が生体膜として認識されるため、タンパク質吸着や血栓生成などの生体反応を防ぐことができます。タンパク質や血液が原因となる汚れが付着しにくくなるという機能も兼ね備えているので、これらの性質を利用し、医療分野で使われるさまざまな機器の表面をコーティング。安全性や利便性を高めるなどの効果が期待できるほか、ライフサイエンスや工業分野での活用も期待されています。

生体膜模倣技術を駆使した新素材を開発

 私たちの体は、30兆から60兆もの細胞が集まってできています。細胞の一つ一つは生体膜で覆われていますが、生体膜は一般的にはレシチンという呼び名で知られているリン脂質の、二分子膜という構造で成り立っています。インテリジェント・サーフェスは、この構造を模倣した人工材料「MPC ポリマー」の技術を使って、さまざまな分野に応用できる製品を開発している企業。MPCポリマーの技術は、東京医科歯科大学が発明・基礎研究を、東京大学が開発を進められました。

 現代の最先端医療の現場では、体内埋め込み型医療機器が多数使われていますが、人工素材で作られている機器は体内で異物として認識され、タンパク質が表面に吸着したり、血栓ができるなどの生体反応を引き起こすという課題があります。

 MPCポリマーは細胞膜の構造を模倣しているため、生体からは異物として認識されません。MPCポリマーをコーティングすることで、生体膜が持っている、タンパク質が表面に付かない、血液が固まらないなどの固有の機能を、人工的な材料の表面に与えることができるのです。

「例えば、人工血管は内径20ミリ程度の太さのものは問題が少ないのですが、細い血管の場合は血栓ができて詰まりやすいという問題があります。そのため、実際には内径が3ミリ以下の人工血管は存在しません。今、使われている人工血管の多くはテフロン製ですが、内側にうまくMPCポリマーをコーティングできれば、人工血管の課題である細い血管の問題を解消できます」

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