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MaaSを成功させるためには、相互の連携を支える信頼と、新しいマインドセットが必要
さまざまな交通サービスを1つのサービスと捉え、次世代の移動の在り方を担う概念として注目を浴びているMaaS(Mobility as a Service)。その生みの親であるサンポ・ヒエタネン氏が率いるMaaS Globalは、既に複数の国や都市でMaaSプラットフォームアプリ「Whim」を使ったサービスを提供しています。Maas Globalは三井不動産と協力しながら、令和2年中には柏の葉でプロジェクトを開始する予定です。サンポ氏はMaaSのエコシステムを機能させるには、信頼感の醸成が不可欠だと語ります。
サンポ・ヒエタネン(Sampo Hietanen) Founder &CEO, MaaS Global
フィンランドの大手建設会社Destiaで働いていた2000年ごろ、SMS(Short Message Service)を通じて交通情報を届けるサービスなどを開発。2006年ごろからモビリティに関わるさまざまなサービスを統合したMaaSビジネスを構想。2015年にMaas Global(当時はMaaS Finland)を設立。2016年にフィンランド技術庁や民間からの投資を受け、ヘルシンキでMaaSアプリ「Whim」の試験運用を開始した。
問題の解決ではなく、もっと大きな夢を提供する
「柏の葉イノベーションフェス」初日のクロストーク1には、モビリティの新しい形を実現する試みとして注目を浴びているMaas Globalの創設者でCEOを務めるサンポ・ヒエタネンさんが登場。「EMPOWER LIFE.」をテーマに、医療ジャーナリスト/キャスターの森まどかさんの質問に答えながら、MaaSサービスのWhimがもたらす未来と、柏の葉への期待について語ってくれました。
1980年代に携帯電話が普及し、通信の世界に革新をもたらしました。同じようなことが、もしモビリティの世界で起こったらどうなるだろうか。サンポさんがMaaSサービスを発想したきっかけは、この大きな変化を目の当たりにしたことだったと言います。
「当時、ノキアのスローガンに『人をつなげる』というものがありました。交通は実際の世界で人をつなげています。サブスクリプション型のモビリティ事業があったらどうなるだろうか。携帯電話会社のような事業者があったらどうなるだろうか。そこでユーザーの立場に立って、どういうサービスが求められるのかを考えてみました」
あるイベントでこのアイデアをまとめたスライドを披露すると、多くの人が賛同してくれました。そして、鉄道、自転車、タクシーなど、既存の交通手段をどのように組み合わせ、パッケージ化すれば人々に納得してもらえるのか、突き詰めていきます。
しかし、地元ヘルシンキでは当時、交通に関してそれほど大きな問題はなかったと言います。ヘルシンキの副市長と街を一緒に歩いている時、「問題はないのになぜMaaSが必要なのか」という話になりました。そして、問題はないけれどなぜこんなにたくさんの車が道路にあふれているのか、という疑問にサンポさんはたどり着きます。
その答えは、必要な交通手段は全て提供されていても、自家用車はいつでも、どこでも好きなときに行けるという「夢」を与えてくれるからだというものでした。これはヘルシンキも、東京も同じです。