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MaaSを成功させるためには、相互の連携を支える信頼と、新しいマインドセットが必要
「おそらく東京にある車の50%くらいは週に1度くらいしか使われていないでしょう。交通計画を担当する人間からすれば、これは間違っているということになります。ですから、車を持つという夢よりも、もっと大きな夢を人々に対して提供しなければなりません。車を所有することで得られる移動の自由と比較して、Whimはいつでも、どこでも、行きたいところに行ける、ということが言えないと駄目なのです」
信頼感がなければ、エコシステムは築けない
車を持つことよりも良いことは何かと考えれば、答えは明らかで、それ以外のものを全部使うということだ、とサンポさんは指摘します。つまり、自転車、バス、列車、車、電気自動車、タクシーなど、いろいろなタイプのモビリティを組み合わせて初めて、人々のニーズを満たせることになります。しかし、一事業者がその全てを網羅し、運営することは不可能です。
そこで各事業者が協力し、連携することになりますが、そのためには各々の利害や意見の相違を調整するために、議論を重ねなければなりません。また、オープンイノベーションをやろうという都市も必要になります。MaaSはあくまでコラボレーションを前提としたエコシステムであり、信頼感がなければ、このエコシステムを築くことはできないとサンポさんは断言します。
「この図は一人があるところに行くのに、どれくらいのものが必要かということを示しています。丸いサークルが重要なのではなくて、それがつながっていることが重要です。しかし、つながるためには相互の事業者の信頼が必要になります。そして、Whimがきちんと機能するというユーザーの信頼が必要です。一番真ん中にいる人、エンドユーザーにとって良いものであるためには、全員がこのユーザーのことを考えて実行しなければならないのです」
サンポさんはモビリティの世界は既に新しい時代に入っており、これまでとは全く違うものになろうとしていると考えています。そして、新しいモビリティの世界では、何をやろうとしているのか、どういったことを目的としているのか、統一したビジョンを掲げ、ルールを決める必要があると説きます。
「私の経験では、都市、政府に関わる人たちがルールを作ってくれればうまくいきます。都市や政府が、エコシステムを提示する。例えばこういうふうに実行しなければならない、ということを提案してくれることが重要です。そして、全ての計画を実行することが重要です。前提として公平な市場があるということが、まずは重要です。そのためにはある程度、政府からの支援が必要です」
柏の葉は世界のモデルになると、サンポさんはさらに言葉を続けます。柏市が深く関与し、大学も関与している。市の大きさもちょうど良い。都市、政府、大学、企業、これらの多くのプレーヤーが協力しようとしているところがとても素晴らしいと、評価しています。