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MaaSを成功させるためには、相互の連携を支える信頼と、新しいマインドセットが必要
「ビジョンの後には具体的な行動、事例が必要です。みんないつかスマートシティは具現化されるだろうと思っていますが、多くの人たちの期待は、第一歩はどうなるのということです。柏の葉にはとても強力なプレーヤーが集まってMaaSを推進しています。この数年のうちに、未来都市の事例を見るために、世界各国の人たちが柏の葉に足を運ぶことになるのではないでしょうか」
新しいマインドセットをつくることも必要
日本でMaaSを実現するには、まずエコシステム全体が立ち上がらなければならない、とサンポさんは指摘します。
「それぞれのモビリティは、エコシステムが完全に出来上がったところで、そちらに移行していきますが、それには時間がかかります。大きなエコシステムを動かしていくためには、規制も変わらなければいけません。そのためには、私たちみんなが協力しなければなりません。柏の葉で、例えばこういうふうにエコシステムが機能できるということをテストしてみる。それが進化の始まりになります」
さらに、新しいマインドセットをつくることも必要だとサンポさんは言葉を続けます。駐車用地はこう作る、列車はこう、カーシェアはこうというふうに、従来は各事業者が別々にゼロから考えてきました。それを、うまくつながなくてはならないからです。ジグソーパズルのように、複雑なピースをうまくつなぎ合わせて、柏の葉でMaaSを機能させることが夢だとサンポさんは語ります。
「2年後に柏の葉に来ると、これこそが未来だということを体験できる。それが私の夢です」
そして、サンポさんは、メディアだけではなく、このプロセスに関与している人たち全員に向け、次のように呼び掛けました。
「どのようなプロセスを踏んで実現したかということを、記録してください。ドキュメンテーションは、とても重要です。どうやって成功したかということが文書化されていないと、失われてしまいます」
トークも終盤に差し掛かり、テーマである、「エンパワーライフ」について視聴者にメッセージを、という司会の森さんの問い掛けに、サンポさんは次のように答えてくれました。
「もしエンパワーライフを実現したいのであれば、つまりイノベーションを起こしたいのであれば、ただ単に業界、街、都市の設計を考えるのではなく、ユーザーが何を求めているのかを考えるべきです。私はモビリティを中心にやっているので、どうすればモビリティでサステナブルが実現できるか、生活の質をよくできるかを考えます。モビリティでは安全に、便利に、楽しく、目的地に到達できることが重要です。人々は1日に90分くらい移動に費やしているといわれています。つまり、1日90分も無駄にしているのです。もし、ここをエンパワ-メントして、90分を自分の時間として利用できたらどうでしょう。つまり、この90分を人生に戻してあげる。それができたら、私たちの試みは成功と言えます」