MAGAZINE
今の延長線上にはない「持続可能な世界」の作り方
問いを立てる→矢印を置く→未来が変わる
対話のためのプラットフォームを作ろう
スプツニ子!さんはこれまで多くの作品をインターネット上で発表し、世の中に問いを投げ掛け、未来についての議論を巻き起こしてきました。そうした活動の中で最近、対話や議論が変質していると実感し、ジレンマを感じています。
スプツニ子!さん「私がアーティストとして活動を始めた10年前は、インターネットというオープンでパブリックな場で議論することに意義がありました。しかし今は、衝突があまりに多く、インターネットにおける議論が陳腐化しています。アメリカ大統領選の討論会はまさに、昨今の議論に見られる問題を象徴しているようでした。どのプラットフォームで誰と議論をするかを考えるべきターニングポイントが来ているように感じます」
宮田さん「その通りですね。われわれは今まさに、対話のフォーマットそのものを考えなければいけない。私は2025年大阪・関西万博のプロデューサーとして、残すべきはモノではなく対話のプラットフォームではないかと考えています」
スプツニ子!さん「まさに正念場ですね。プラットフォームのデザインによって、対話によってつながるか、衝突に終わるのかが決まってしまうと思います」
宮田さん「スプツニ子!さんには、ぜひ対話のプラットフォームを作るための対話をしていただけるとありがたいですね」
「柏の葉で愛玩ロボットを作りたい」
柏の葉イノベーションフェスは、柏の葉スマートシティを舞台としたオープンイノベーションフォーラムです。より良い未来に向けてのオープンイノベーションを起こすためには、何が必要か。2人がまず挙げたのは「多様性」というキーワードでした。
宮田さん「イノベーションの講義でよく話すのですが、基礎能力が高い人だけを集めてアイデアを出し合っても、70点くらいのものしかできない。一方で多様性のある人たちが集まった場合は、出てくるアイデアには10点もあるけれど、100点もある。100点は後者からしか生まれないんです」
スプツニ子!さん「多様なバックグラウンドを持つ人が集まった組織では、課題を発見する視点が多様になります。そして、課題が見つかれば、解決に向けての矢印が打てます。いくら技術力があっても、課題を発見し、解決するセンスがずれていると、トンチンカンな答えしか生まれません」
柏の葉スマートシティでは2019年から「イノベーションフィールド柏の葉」というプロジェクトが始動。これは街を舞台にした実証実験プラットフォームです。
スプツニ子!さん「私もイノベーションフィールド柏の葉に応募したいです。作りたいロボットがあるんです。街に住む暇な人がクラウドソーシングで動かす愛玩ロボット。AIがロボットを動かすと予測可能でつまらないので、暇な人による人力のロボットができたら面白いと思って」
宮田さん「実は私は小学校高学年から中学生まで柏市民でしたし、大学時代から今まで東大に所属しているので、この街にはご縁があるんです。課題先進国の日本において、この街を拠点に最先端の取り組みを行っていることが示せれば、日本の未来を開くことにもつながります。私も柏に所縁のあるものとして、何らかのプロジェクトに参加したいです」
最後に、このクロストークのテーマである「EMPOWER SOCIETY.」を実行するためのヒントを2人に聞きました。
スプツニ子!さん「社会や周りの環境を変えられないと思い込まないことです。どんなことでも変えられる。その意識を持って周りを見回すと問いが立てやすくなります。もう1つは、いつもとは違う環境に身を置いてみること。そうすると社会や国、文化にどんな共通点や違いがあるかが見えてきて、人間や社会の本質を考える上ですごく役に立ちます」
宮田さん「EMPOWER SOCIETY.とはEMPOWER YOURSELF.。私たちはコロナ禍を経験して、自分一人がご機嫌でも世界は回らないということに気付きました。では、私たちは何を大切にして、社会とどうつながり、ともにより良い未来を創っていくのか。それを考える中で『新しい豊かさ』が見えてくると思います」