MAGAZINE
今の延長線上にはない「持続可能な世界」の作り方
問いを立てる→矢印を置く→未来が変わる
クロストーク【EMPOWER SOCIETY.】
宮田裕章氏×スプツニ子!氏
柏の葉イノベーションフェス、3回目のクロストークのテーマは「EMPOWER SOCIETY.」。一人一人に「違い」があるからこそ偏見や差別が起こる社会の中で、私たちはどのように行動すれば「違い」をパワーに変え、イノベーションにつなげ、未来をより良い方向に変えていけるのか。サイエンスやカルチャーの既存の枠を軽々と飛び越え、幅広い領域で活躍する宮田裕章さんとスプツニ子!さんが縦横無尽のトークを繰り広げました。モデレーターは医療ジャーナリスト/キャスターの森まどかさんが務めました。
慶應義塾大学医学部教授 東京大学特任教授 宮田裕章氏
2003年東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修士課程修了。同分野保健学博士(論文)。早稲田大学人間科学学術院助手、東京大学大学院医学系研究科 医療品質評価学講座助教などを経て、2015年より現職。その他、社会的活動の複数の役職も兼任している。専門はヘルスデータサイエンス、医療の質、医療政策。データを活用した社会変革をさまざまな分野で実践し、新型コロナウイルス感染症対策では厚生労働省・LINEと連携して全国調査を実施。2025年大阪・関西万博ではプロデューサーを務める。
アーティスト 東京藝術大学デザイン科准教授 スプツニ子!氏
ロンドン大学インペリアル・カレッジ数学部を卒業後、英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)で修士課程を修了。在学中より、テクノロジーによって変化する社会を考察・議論するデザイン作品を制作。マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教、東京大学生産 技術研究所特任准教授を経て現職。2017年 世界経済フォーラムの選ぶ若手リーダー代表「ヤング・グローバル・リーダー」、2019年TEDフェローに選出。著書に『はみだす力』、共著に『ネットで進化する人類』など。
新型コロナ騒動から見えた日本のデジタル化 今・未来
柏の葉イノベーションフェスが開幕して1週間。3回目のクロストーク「EMPOWER SOCIETY.」に登壇した東京大学特任教授の宮田裕章さんは今、頭の中を占めているビジョンについて熱く語り始めました。
宮田さん「新型コロナウイルスを経験して分かったのは、日本のデジタル化の遅れです。例えばマスクの問題。在庫がデータとして把握できていれば、不安に駆られた買い占めや、本当に必要な人がマスクを手に入れられないという事態は防げたはずです。マスクの総量は足りていたのですから。もう1つの例が給付金。勾配をつけて30万円を給付するという当初の案は有効だったのに、データ不足のせいで実現できず、1人10万円を給付するために1500億円の経費がかかってしまった。こうした問題はデジタル化、データの活用によって解消できるのです」
宮田さん「これまでの社会では個々の実態が把握できなかったため、『最大多数の最大幸福The Greatest Happiness of The Greatest Number』を目指し、一律のサービスを提供するしかありませんでした。しかし、国家デザインを根本から組み直し、データの活用を促進すれば、これまでのようなコストをかけずに個別のデータを得て、個々に必要なサービスを提供できる。誰一人取り残さずに『最大“多様”の最大幸福The Greatest Happiness of The Greatest Diversity』が実現できるはずなんです」