「EMPOWER FUTURE.」は、
次世代への本当に大きなメッセージになる

データ駆動型社会におけるエンパワーメントがテーマ

森さん(司会)「オードリー・タンさんには、オープニングトークで人と人とが能動的につながっていくには、信頼や楽しさといったポジティブなことが大切で、それが未来へとつながるというお話をしていただきました。最後にお二人に、今回のテーマである『EMPOWER FUTURE.』について、そこに込める思い、視聴者への皆さんへのメッセージをお伺いしたいと思います」

出口さん「日本も中国もマスクが不足していた時期に、台湾はいち早くデータ化、見える化したわけです。マスクの在庫量を。それで非常に安定的にコロナに対応した。今回のタイトルのエンパワーメントは、データ駆動型社会におけるエンパワーメントをテーマにしているのだと思いました。

 私が初めてエンパワーメントという言葉を聞いたのは、1990年代の後半ですが、阪神淡路大震災の後で、日本の社会がやや混乱している時に、何か社会の役に立ちたいという一般の方々がいた。例えば、育児が終わった主婦の方々。そういう方々が、自分が持っている力を組織化していくための方法を求めていて、NPOの法律ができたりして、そういう人たちがNPOの組織化をして社会に貢献できるようになった、それが20年くらい前のエンパワーメント。

 今回のコロナ禍の中のエンパワーメントは、データうまく活用することによって、市民社会をどれだけもっと住みやすくするか、あるいは集まることがなかなかできない都市において、どれだけ人と人との交流、つながりを持たせるかということだと思うんです」

柏の葉スマートシティでは、分野横断型のデータプラットフォームを民間と公共が協力して構築し、活用する街づくり戦略を描いています

出口さん「そのときにはやはりデータを出す側、提供する側と、データを使っていろいろなサービスをする、あるいはビジネスをする側との、信頼関係が重要だと思います。そういう意味では、オードリー・タンさんが言われるようなトラストというものが根底にあるんだと思います。トラストを意識しながらデータを使ったビジネスとかサービスで、地域がエンパワーメントする、あるいは個人がエンパワーメントする、ということを、今日をきっかけにぜひ、皆さん、考えていただきたいと思います」

藤田さん「『EMPOWER FUTURE.』ですから、未来を自分たちでつくるというイメージが出てくるかと思います。本来、未来という言葉は50年後とか100年後、自分たちの手に届かないところを指して、未来と言っていた。ところが今まさに情報革命ということで、どんどん時計の進み方が早くなってきています。

 10倍とか、あるいはそれ以上の速さで世の中は進展しているのではないかと思います。ということはよく考えてみますと、過去100年間で起こった社会の変化、つまり人が一生かかっても絶対見られなかったような変化を、私たちは見ることができる。

 まずこのことだけを考えても、素晴らしいことだと思います。その上で、見られるからには、ただ単にそれを観客席から見るのではなく、自分自身がスタジアムの中に入って、つまり、未来はこうやってウォッチしていくものではなくて、自分たちでつくっていくものだという、それが可能になる、

 時計の進み方が早くなるということは、ポジティブに考えたときに、届かなかったものが、届くようになる。しかもそれを、自分たちでつくれるというのは素晴らしいことだと思います。『EMPOWER FUTURE.』、未来を自分たちでつくり出していこうという、これは次の世代に対する本当に大きなメッセージになるんじゃないかと思います」

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