第二の創業期を迎え、最先端技術分野と環境分野に注力

株式会社ASM

ASMの澤田匠取締役COO。戦略企画部部長を兼ね、第二の創業ステージとも言える段階に入ったASMの舵取りを担います

繊維から自動車、情報機器など私たちの暮らしの至る所で合成樹脂などの高分子材料が使われており、私たちの生活と切っても切れないものになっています。高分子の材料を作るために分子の鎖を化学的に結合させて3次元化することを、架橋と呼びます。ASMは東京大学の伊藤耕三教授が2000年に初めて合成に成功した、架橋部分が紐状の分子に沿って動く環動高分子材料(スライドリング マテリアル=SeRM®️)を量産素材として扱っている企業です。繊維から自動車、情報機器など私たちの暮らしの至る所で使われている高分子材料にSeRMを添加することで、衝撃吸収性、復元力、電気特性などを飛躍的に向上させ、用途を広げる可能性を持っています。昨年から事業体制の充実を図り、社名も一新して、海外顧客の獲得や、最先端技術分野・環境分野への展開を図っています。

 高分子化学と工業化への取り組みが始まってから約100年。高分子工学の進歩や石油化学工業の発展により、繊維、情報家電、自動車、飲料・食品パッケージ、化粧品やスキンケア用品の機能性素材まで、高分子材料は至る所で使われ、私たちの暮らしと切っても切れない存在となっています。

 近年では新しい原理の解明や研究が進み、2016年のノーベル化学賞は、仏ストラスブール大学のジャン=ピエール・ソバージュ教授、米ノースウエスタン大学のフレーザー・ストダート教授、蘭フローニンゲン大学のベルナルド・フェリンガ教授が「分子機械の設計と合成」で受賞しました。分子を機械のように動かす技術の開発に対して与えられたものです。

分子機械を初めて量産素材に

 分子機械には分子を知恵の輪状に組み合わせたロタキサンという状態を使います。

 また、身近な高分子材料は鎖状の高分子同士を化学的に結合させることで安定した立体状に成型することができます。この結合を「架橋」と呼びますが、2000年に東京大学の伊藤耕三教授は紐状の高分子(ポリエチレングリコール)を環状分子(シクロデキストリン)に通したネックレス状のロタキサンを構成させ、この環状分子同士を架橋させたポリロタキサン合成することに世界で初めて成功しました。これにより架橋部分が紐状の分子に沿って動く環動高分子材料(スライドリング マテリアル)が誕生しました。ASMは、スライドリング マテリアル(SeRM®️=セルム)の応用・生産技術を持つ世界で初めてロタキサンを量産素材として扱っている会社です。

スライドリング マテリアルの環状分子からは分子の側鎖が伸びており、その先端の官能基が、汎用高分子と反応し架橋します。ASMの強みは、ポリロタキサンに関する多くの特許を持っていること、ポリロタキサンの量産技術を持っていること、ポリロタキサンの側鎖と官能基を制御し、顧客の要望する高分子素材に応じてSeRMをカスタマイズするノウハウを持っていることです。(トル)

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