第二の創業期を迎え、最先端技術分野と環境分野に注力

衝撃吸収性、復元力、電気特性などを飛躍的に向上させる

 SeRMを添加することで、さまざまな高分子材料にそれまでなかった特性や長所を加えることができます。

 例えば、高分子材料の代表格である樹脂では、SeRMを添加していない場合、高分子同士の架橋点に自由度がないため、一定の圧力を加えると分子の結合が短い所から結合が壊れ、破壊されてしまいます。一方、SeRMを加えた場合には、架橋点が動くことで樹脂の自由度が格段に向上し、衝撃吸収性能が増します。耐傷・耐摩耗性能も、約30〜50%向上します。

従来の樹脂では自由度がなく、架橋点の間隔が短い鎖から破壊されますが、SeRMが添加されることで、架橋点の自由度が増し、樹脂の耐衝撃性が格段に向上します

 元に戻ろうとする復元力を増すこともでき、軟質ウレタンフォームに添加すると、超低ヘタリ性と高・圧力分散性を実現できます。700ニュートンの荷重を8万回加えた後に測定した40%圧縮硬さの初期硬さに対する低下率は、SeRMを添加した製品は、わずか0.1%に抑えられるという結果を得ています。また、シート型圧力分布測定器を用いて座圧分布を測定したところ、市販品に比べて圧力の集中が少なく、高レベルの圧力分散性を実現していることが証明されました。

 さらに、SeRMは、低ヤング率(柔らかい)・低ヒステリシスロス(形状の変更に伴うエネルギーロスが少ない)・高誘電率を有しています。高電圧がかかったときに絶縁体が電気的に破壊され、絶縁性を失ってしまう絶縁破壊に対する耐性も高まります。この特性を利用して、誘電アクチュエーターや高周波対応材、防湿コート材、バッファーコート剤など誘電体、高周波領域に適用することができます。

幅広い製品分野で実用段階に

 SeRMが持つこれらの優れた特性を生かせる領域は幅広く、まず期待されるのは自動車関連分野です。自動車は環境性能を向上させるために、車体の軽量化が課題となっています。従来の樹脂は薄くすると壊れやすく、厚く硬くすると脆くなるので、使える部分が限られていました。しかし、従来の樹脂の弱点を補う強靭化した樹脂であれば、構造材や機能部品として金属の代わりに使うことができ、大幅な軽量化が見込めます。伊藤教授が主導する国家プロジェクトImPACTにおいて、東レと共に開発したポリアミド系の樹脂は今年実用化され、同社での製品展開が期待されています。