第二の創業期を迎え、最先端技術分野と環境分野に注力

 ASM取締役COOの澤田匠氏は、「耐衝撃性を求められる分野は非常に多いのです。例えば、リチウムイオン電池は、衝撃が伝わると爆発の危険があるため、その周辺部材への耐衝撃性の要求は非常に高く、金属が主に使用されています。SeRMの技術を応用した樹脂であれば、そのような用途での使用も期待でき、安全性を担保した上で軽量化を図れます」とし、今後、世界中で普及が進むであろう、電気自動車など非常に高い安全性を求められる分野での採用を期待しています。

 身近なところでは、住友ゴムグループのダンロップスポーツマーケティングから発売されたゴルフボール、NEW「スリクソンZ-STARシリーズ」のコーティング「Spin Skin コーティング with SeRM®」に採用されています。飛距離性能を高めながら、優れたスピン性能とソフトな打感を高次元で両立することができました。

 既に実用化されている製品で面白い使い方をされているのは、研磨メディアへの適用です。SeRMを含有したエラストマーを、研磨剤であるダイヤの砥粒を担持する核体として用いることで、研磨メディアが加工物に衝突したときに素早く板状に変形し、表面に留まりながら長い距離を研磨します。従来の研磨メディアに比べて約6倍の研磨力を実現し、優れた鏡面性を得ることができるようになりました。

 優れた電気特性を生かした応用例は、豊田合成と開発している「e-Rubber」です。電圧のオン・オフで収縮するアクチュエーターとして使えるほか、圧力を検知して電気信号に変換するセンサー機能を持つため、圧力センサーとして使うこともできます。電磁モーターに代わる次世代の動力源としてのロボットの人工筋肉、人がものに触れたときの感触を振動などで擬似的に再現するハプティック技術、医療分野での心臓手術トレーニングシミュレーター、従来のロボットにはなかったモノの形状や硬質などを感知できる「触覚ハンド」など、広い分野での応用を目指して開発が進められています。

東京モーターショー2019に展示された電気自動車「ItoP(Iron to Polymer)」。Impactの成果の1つとして、「オール樹脂化」をテーマに掲げて開発され、新素材「しなやかタフポリマー」が、モノコックからインテリア、タイヤまで幅広く使われました