自治体のデータヘルスの課題をサポートし、日本のどこに住んでも健康でいられる社会にしたい

e-wellnessシステムは、歩数計を通して集めたデータを取り込み、参加者に適した個別の運動・栄養プログラムを提供する仕組みです

 e-wellnessシステムを運用してみると、一人一人に適した個別プログラムを数年間継続することで、一人当たりの医療費を下げられることが分かってきました。しかし、同時に課題も見えてきたと、久野さんは説明してくれます。

「きちんとした個別プログラムをやると、一人当たりの医療費は年間10万円程度下がることがデータから証明されました。しかし、このシステムを導入した自治体の医療財政全体にインパクトを与えるまでには至りませんでした。なぜかというと、この自治体の医療費全体を下げるためには2000人くらい参加していただかないと効果がなかったのですが、1300人くらいで頭打ちになってしまったからです。それが私たちの次の課題になりました」

 久野さんたちは、参加者が増えない原因を明らかにするために、自治体で約5000人のランダム調査を行いました。その結果、「健康無関心層」が約7割に上ることが分かりました。また、これらの人々は、「健康情報を取ろうとしない状態にある」ことも明らかになり、「分かっていないから健康づくりをしない」ということが見えてきました。この研究結果は政府の「骨太の方針」にも反映され、健康情報のインフルエンサーを養成する、「健幸アンバサダー」などの事業に結び付いています。

e-wellnessプログラムを継続実施することで、4年後には一人当たりの医療費を年間10万円引き下げる効果があることが実証されました

首長対象の研究会を組織

 久野さんは事業を進める中でさらに、自治体で行われている健康関連事業は、評価がきちんとされてこなかったことに気付きます。

「健康や福祉というのは選挙や議会でも必ず議論されるので、どの自治体でもいろいろな施策をやってきました。ただ、やるのはいいのですが、本当にびっくりするくらい事業の評価がされていませんでした」

 健康増進プログラムをいろいろな自治体に導入してもらう、あるいは国の施策として取り入れてもらうためには、きちんとした評価を経た、エビデンスに基づいた成功例を占めすことが必要です。そのためにはまず自治体首長のリテラシーを高めてもらうことが重要だと、久野さんは考えました。