医療現場のニーズと工学のシーズをマッチングさせ、新しい医療デバイスを自ら生み出す

国立がん研究センター東病院 
先端医療開発センター手術機器開発分野長
大腸外科長

伊藤雅昭氏

伊藤雅昭さん。実際の医療機器を備えた模擬手術室

国立がん研究センターは、「世界中のよりよい医療をいち早く患者さんへ届ける」をモットーに、最高レベルのがん治療に加え、「世界レベルの新しいがん医療の創出」のための研究開発にも取り組んでいます。その拠点となるのが、東病院に設置された「NEXT医療機器開発センター」です。大腸を専門とする外科医の伊藤雅昭さんは、同センター手術機器開発分野長でもあり、画期的な手術支援ロボットのほか、未来の医療・手術の現場に貢献するさまざまなデバイスの研究開発に取り組んでいます。他にはできない「早さ」で課題解決のゴールを目指せるNEXTの特徴について伺いました。

医師と研究センター発ベンチャーが連携した医療器具開発

 国立がん研究センターには、築地の「中央病院」と柏の葉の「東病院」の2施設があり、いずれも医療法に基づく臨床研究中核病院に指定され、国際水準の臨床研究や医師主導治験等の中心的な役割を担う機関です。2施設は、組織としては1つの病院として運営されていますが、東病院では、柏の葉ならではの独自の取り組みが行われています。

 それは「新しい医療」を作ることで次世代の最高のレベルの医療を自ら生み出す試みです。「世界最高のがん医療の提供」と「世界レベルの新しいがん医療の創出」の2つのミッションを掲げ、併設の先端医療開発センターでは、がん治療薬・医療機器開発を強力に進めています。外科部門では、2017年5月に「NEXT医療機器開発センター」が設立され、産学官・医工連携で臨床ニーズに基づいた医療機器の開発が進められてきました。

 その1つが、同センター手術機器開発分野長でもある外科医の伊藤雅昭さんが取り組む手術支援ロボットの開発。2015年に「国立がん研究センター発ベンチャー」として起業した株式会社A-Tractionと連携した、腹腔鏡手術支援ロボットの開発です。

必要な機能に絞った手術支援ロボットで医師と病院の負担を軽減

A-Tractionの腹腔鏡手術支援ロボットの開発については、MAGAZINE内の記事を併せてお読みください。

 

 同社の取締役も務める伊藤さんは、国立がん研究センター発ベンチャーには真の臨床現場の課題を解決するための「シンプルさ」と「早さ」というメリットがあると言います。

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