データの利活用が導く都市と暮らしの変容
深く広いデータ利活用が描き出す都市の未来像

クロストーク【EMPOWER CITY.】
Part1:豊田啓介氏×柴崎亮介氏
Part2:豊田氏×柴崎氏×吉崎典孝氏

人間の活動は「データ」として集積され、暮らしやビジネスに利活用されています。では、そのデータをより幅広く、深いレベルで収集し、安全かつ有益な形で生活や街づくりに利活用するにはどうすればよいのでしょうか。情報技術や空間・街づくりに造詣の深い3人が、三者三様の立場から熱い議論を交わしました。モデレーターは医療ジャーナリスト/キャスターの森まどかさんが務めました。

建築家 豊田啓介氏

安藤忠雄建築研究所を経て、コロンビア大学建築学部修士課程修了。2007年より東京と台北をベースに建築デザイン事務所noizを蔡佳萱氏、酒井康介氏と共宰。2017年、「建築・都市×テック×ビジネス」をテーマにした領域横断型プラットフォーム「gluon」を金田充弘氏、黒田哲二氏と共同で設立。「WIRED Audi INNOVATION AWARD 2016」受賞イノヴェイター、経済産業省「万博計画具体化検討ワーキンググループ」委員。東京大学生産技術研究所客員教授。

東京大学 空間情報科学研究センター センター長 柴崎亮介氏

東京大学大学院工学系研究科土木工学修士課程修了。建設省土木研究所を経て1988年東京大学工学部助教授、1991年同大学生産技術研究所助教授、1998年より現職(2005〜10年センター長)。2008〜10年GIS学会長。ISO(国際標準化機構)TC211(地理情報)にて空間データの品質評価手法の国際標準作成に関するプロジェクトリーダー(1998〜2003年)。GEO(地球観測グループ)のデータ・構造委員会共同議長(2008年〜)を務める。2013年よりG空間×ICT推進会議座長。

三井不動産株式会社 柏の葉街づくり推進部 吉崎典孝氏

個人情報を預かり、運用する「情報銀行」

「EMPOWER CITY.」をテーマにしたクロストークの前半には豊田啓介さんと柴崎亮介さんが登壇。柴崎さんは、社会活動として取り組んできた「情報銀行」について紹介しました。情報銀行とは、お金ではなく情報を預かって世の中のために活用し、預けた側と事業体双方にとっての利益を生み出す事業体のことです。

2011年の東日本大震災の際にビッグデータの解析などに携わった柴崎さん(右)。「個人情報は、非常に多様な意味をもつ貴重なもの。それを活用するためには、情報を取得される側が情報の使い道に関与していく方法が必要」と、情報銀行のコンセプトを考案した

 柴崎さん「EUでは個人情報保護を目的とした『EU一般データ保護規則(GDPR)』が2016年に発効しました。これによって、例えばGoogleやFacebookなどのインターネットサービスで、自分のアカウントから自分のデータをすべてダウンロードできるようになりました。しかし、自分のデータが入手できてもそのファイルを開き、読み取る手段が一般公開されてない。そのため、自分のデータを編集したり、活用して利益を得たりするのは非常に難しいのです」

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