MAGAZINE
今の延長線上にはない「持続可能な世界」の作り方
問いを立てる→矢印を置く→未来が変わる
データ利用の方向性はFor MoneyからFor Goodへ
データが個人のために利活用されると聞いて、真っ先に頭に浮かぶのはインターネット広告という人も多いはず。スプツニ子!さんも同じです。
スプツニ子!さん「確かにデータに基づいて私にぴったりのオファーをしてくれるときはあります。その一方で、タクシーに乗るとカメラが付いていて、その画像から私が女性だというだけで全く興味のない商品をリコメンドしてくることもある。つまりデータがステレオタイプな判断をしてターゲティング広告を仕掛けてくるんです。宮田さんはそのジレンマをどう捉え、どんな解消の方法があると思いますか?」
宮田さん「これまでの企業は、お金のために(For Money)データを使ってきました。悪い例を挙げれば、データに基づいてアルコール依存症の人にお酒の広告を見せるようなもの。意図的にフェイクニュースを流し、選挙での投票行動を変えたのもお金のためにデータを悪用した一例でしょう。しかし最近は、『データはみんなが一緒に使うもの。より良い社会のために使おう(For Good)』という方向に変わってきています。データ企業、特にテックジャイアントと呼ばれる企業も同じです。例えばGoogleは、コロナ対策においてみんながフェイクニュースに飛び付かないようにするため、For MoneyではなくFor Good の結果が表示されるように検索のアルゴリズムを作り変えています」
スプツニ子!さん「それは例えば、コロナウイルスに関する陰謀論が検索上位になりづらい仕組みを作るというような?」
宮田さん「その通りです。これまではFor Moneyの仕組みだけで富を独占できたのですが、データがみんなのものとなると、そうはいかない。For Goodの立場であるというメッセージを発しないと、テックジャイアントといえども安泰ではないのです」
では、何をもって「Good」とするのか。さらなる疑問が湧いてきます。
宮田さん「ヒントはSDGs、つまり持続可能性です。SDGsの考えは、緒方貞子さんやアマルティア・センさんが提唱した『ヒューマン・セキュリティ』という考えから生まれました。彼らは、救った命が虐殺する側に回るかもしれないという可能性に苦悩しつつも、やはり命のともしびを消さない、というポリシーを掲げました。しかし、コロナ禍により、命のともしびを消さないだけでは、貧困から這い上がれないし、格差の問題も解決できないことが分かってきたのです。だから、次なるステップは命のともしびをいかに輝かせるか。そのことを考える上で、スプツニ子!さんがなさってきたように『どんな未来を作るか』を問い、それについて対話することがより重要になってきています」