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伝え方、見せ方を切り開いていくのも研究者の役目
研究結果を社会に活かす。その上での多くの人に感心を持ってもらうことの大切さは、矢野さんも強調します。そこを切り開いていくのも研究者の役目だと言います。
矢野さん「私も健康に関するアプリケーションにありがちなグラフや数値を表示するインターフェイスは好きではないので、常にもっといいものができないか模索しています。そこで、幸福度がアップするとウェアラブルに表示されるキャラクターが喜ぶ仕組みを取り入れました。グラフや数値の表示より、確実にUXが向上し、特に若い人から好評でした」
登壇者からもさまざまなアイデアが出ました。
福田さん「認知症について高齢者の方にお声掛けをしても、当事者意識がないとなかなか自分事として捉えてはいただけません。若い人も含め、健康のために何かをしていただくには、目的を置き換えて関心を持ってもらう必要を感じます。苦いもの、おいしくないものを遠ざけるのは当然。まずはおいしいからを入り口に、手に取る機会を増やし、気付くと健康になっている。そうしたサイクルを作りたい」
小林さん「歩行も見せ方で扱いやすさが変わると思います。体重を減らすのは時間がかかり、効果を実感しにくい。でも、こうするとかっこよく歩けますよ、という提案は、すぐに変化が実感できます。そして歩くことが習慣になったタイミングで、体重への関心を持ってもらうと効果も実感できます。変わりやすいもの、変わりにくいものを時間軸で捉え、タイミングを工夫することも必要です」
佐々木さん「若い人の健康へのイメージには、我慢・摂生・管理などが含まれます。そのため健康を意識させないアプローチが必要です。例えば、仕事のパフォーマンスなら若い人の関心も高い。その視線で見ると、体調不良は仕事をやめてしまう要因。そこから、起床、朝食、そして健康管理への関心を高めることができる。仕事のパフォーマンスを最大化するためのツールとしての健康という考え方、環境提案も面白いのでは」