必要な機能に絞った手術支援ロボットで医師と病院の負担を軽減

 このような経緯から同社のオフィスは国立がん研究センター東病院の中に置かれ、伊藤医師はもとより他の診療科の医師からも意見聴取などの面で協力を得ているほか、ロボットの薬事承認が降り、販売を開始した暁には、医師のトレーニング体制への協力も協議中です。

 A-Tractionの手術支援ロボットとの親和性が高いと期待されているのが、伊藤医師が得意とするTaTME(経肛門直腸間膜全切除術)への適用です。腹部側と肛門側から同時に手術を行い、肛門機能を温存しながら肛門に近い部分の腫瘍を摘出する手術です。

 肛門機能を温存できる可能性が高まり、患者のQOL(生活の質)の向上が見込めるとともに、手術時間も2分の1から3分の1に短縮できるため、画期的な術式として注目されています。ただ、この手術を行うには腹部側3人、肛門側2人の合計5人の医師が必要です。「通常以上に人手が必要な手術なので、人手が足りずに諦めている病院も多いはず」と、篠原さんは推測しています。

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TaTMEという術式には2チーム、合計5人の医師が必要です。A-Tractionの手術支援ロボットを導入することで、同じ手術を少ない数の医師で行うことが期待されています

 柏の葉という場所は、同社にとって必要不可欠な国立がん研究センター東病院があるだけではなく、開発の拠点を置いている東葛テクノプラザという施設があることも魅力だと安藤さんは言います。

「国立がん研究センター東病院のすぐそばに東葛テクノプラザがあって、そこには工業検査などに必要ないろいろな検査設備が整っています。医療機器でも必要な検査などの一部を、予備的に行うことができて、とても助かります。またこの場所には千葉大や東大もあり、産学官の連携がうまくできています」

 A-Tractionの手術支援ロボットは、2021年中の薬事承認と販売開始を目論んでいます。2023年には海外展開も視野に入れており、まずはヨーロッパを攻める予定です。発売後5年目に国内累計販売100台、症例数1万を目標にしています。

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