技術立国のものづくり企業たれ!柏の葉の産学に伝えたい卒業企業の矜持

大学・研究機関とのコラボレーションによるCASを用いた研究成果

大和田さんは70代になった現在も、自ら車を運転し全国の顧客の元へ会いに行きます。「お客さまの課題を知る。そのためには会うことから全てが始まります」と大和田さんは話します

 大和田さんのものづくりの基本は「知ること」です。家業の製菓製パン機器のメーカーで営業職に就くと、機器で扱う素材を知らずに機械は売れないと、同業他社の門を叩いて素材について学ばせてもらったそうです。

「お客さまの方が詳しい。当然ですよ。その機械で商売し、利益を出さなければいけない。お客さまが知りたいのは機械の値段ではなく、自分が焼きたいパンがどうすれば焼けるかということ。お客さまの課題を知り、素材を知り、その上でなければ求められる機械を作ることはできない。私は、そのとき、胸に刻みました。機械は値段で売るものではない。機能で売る物だ。その信念は今も変わりません」と大和田さん。

 素材の勉強をさせてくれた同業企業、医療分野への応用のため共同研究を引き受けてくれた大学等の研究機関、何より抱える課題やハードルの高い要望を話してくれた顧客となる人々。大和田さんは、出会った人々から学んだ全てが財産だと言います。そしてその財産は今も増え続け、全国の大学や研究機関とのコラボレーションが拡大しています。

●東京大学医科学研究所とCAS技術の凍結を用いた「歯槽骨再生法」を共同開発

●iPS細胞研究所の山下潤教授とCAS技術を用いた多能性幹細胞の共同研究

●京都大学医学部・病理診断科の鶴山竜昭准教授との共同研究

●慶應大学大学院・医学研究科の岡野栄之博士との共同研究

●佐賀大学医学部とCASエンジンを用いた病院食・介護食の共同研究

 大和田さんの「知る」は、今ではアビーの企業活動そのものともなり、アビーの社員が全国の大学・大学院の研究員として医療分野の研究に取り組んでいます。

CASは既存の急速冷凍庫に「後付け」で設置することが可能なシステムです。庫内の格子状のものがCAS。磁石を持った手を入れると、庫内の空間を流れるエネルギーを体感することができます