大きく軽いディスプレイが、空間演出や情報伝達の在り方を変える

 例えば、地域の交通情報や天候、人の流れなどのリアルタイムデータを集めAIで解析して、オフィスビルのエレベーターや共有部分、商業施設の中にあるレストランの混み具合などをデジタルサイネージに表示すれば、働いている人、住んでいる人、買物客などの利便性を高めることができます。災害時の情報共有や誘導などにも使え、マーケティング用途に限らないさまざまな役割を果たすことができます。

オルガノサーキットは、東京大学大学院新領域創成科学研究科の竹谷純一教授が開発した有機半導体素子技術を基盤に、超大型・軽量のフレキシブルサイネージディスプレイを製造する技術の実用化に成功しました

東大発の技術で、大きく軽いディスプレイを実現

 繁華街のビルの外壁や商業施設内、スタジアムなどのスポーツ施設などに、大型のディスプレイは既に数多く設置されています。このようなディスプレイに多く使われている「パッシブ型LEDパネル」は、消費電力が大きく、1平方メートル当たり約40キログラムと重いことが弱点でした。設置にあたっては耐荷重の足りない壁面を補強する必要が生じることもあり、本体が高価格であることに加え、さらにコストがかさむことも課題でした。

 オルガノサーキットが開発した大型ディスプレイは、これらの難点を全て解消できると、代表取締役社長の中原和幸さんは強調します。

「現在の大型サイネージディスプレイは、重い、高い、消費電力が大きい、設置に時間がかかるなどの問題があり、既存技術の延長線上ではこの課題は解決できません。東京大学とオルガノサーキットが新規要素技術を応用開発することで、これらの制限を解決しました」

 この技術を使うと、フィルム状の柔らかい素材の上にインクのような材料を流し、印刷するように半導体を作ることができます。そのため、「従来型の半導体を作る際に必要だった高温状態や、真空状態が必要ではなくなり、決定的に装置コストが下がり、固定費を下げることができます」と中原さんは言葉を続けます。