「人間拡張技術」で、新たなサービス産業の拠点を作る

幅広い領域を人間拡張技術として融合

 少子高齢化に伴う社会課題解決を主に担うのが人間拡張研究センターです。センサーデバイス、ロボティクス、バイオメカニクス、視覚・認知心理学、サービス工学、デザインの6つの領域を人間拡張技術として融合し、介護、健康、労働分野の負担軽減や運動機能の拡張、技能スキルの拡張などに結び付ける技術を研究開発しています。

「介護、健康、労働。これらに共通することは何か。それは、フィジカルなサービスであるということです。フィジカルではないサービスは、サイバー空間で完結するもの。映像配信とか、音楽配信などです。例えば、誰かを介護しなければいけない、というときには必ずフィジカルなコンタクトが必要になります。私たちは、フィジカルなコンタクトがあるサービスをやりたい。その理由は、日本の産業の強みがここにあるからです」

 人間拡張研究センター長の持丸正明さんは、研究開発の狙いをこう説明します。

人間拡張研究センター長の持丸正明さん。フィジカルな接触があるサービスに役立つ技術を開発していきたいと、研究の狙いを語ります

人間拡張研究センターでは、センサーデバイスからデザインまで6つの領域を人間拡張技術として融合し、介護、健康、労働分野に社会実装する研究を行っています

 人間拡張技術のベースとなるのが、センサーデバイス技術です。柏センターでは、ひずみを検出することで人の動きを感知できるセンサーや、圧力センサーを印刷で作る技術を開発しています。ニットの中に導電性のある糸を編み込むことで、編み地が電極になったり配線になったりする技術を開発し、ウエアラブルセンサーを作る研究も行っています。これらのセンサーデバイスによって、今まで計測が難しかったデータを集めることが可能になります。

 こうして集めたデータを、製品の人間適合性を仮想評価するデジタルヒューマン技術に落とし込んで検証し、さらに現場で確認するサイクルを回すことで、研究の確度を高めていきます。

ロボティクスを担当するチームでは、自閉症スペクトラム障害を持つ児童の対人コミュニケーショントレーニングの手段として、アンドロイドロボットを用いる実験も行っています

 柏センターの1階にはクリーンルームがあって、ある程度まとまった数のセンサーを作ることもできます。このため、研究開発の早い段階でモデルを作リ、実際にユーザーに使ってもらって不具合を見つけ、改善につなげる「ラピッドプロトタイピング」が容易にできるのも強みです。

柏センターの1階にはある程度まとまった数のセンサーを作ることができるクリーンルームがあるほか、継ぎ目なくニットを編むことができる編み機も設置されています。導電性の糸を編み込むことで、ウエアラブルセンサーを作ることができます