脳と「こころ」の理解、精神神経疾患の新薬開発研究に新手法 モデル動物解析の自動化で高精度・高効率の研究を実現

フェノバンス・リサーチ・アンド・テクノロジー合同会社

ヒトの疾患メカニズムの理解や新薬の開発には、「疾患モデル動物」による動物実験が欠かせません。フェノバンス・リサーチ・アンド・テクノロジー合同会社では、実験動物の代表であるマウスを用いて、動物実験の質とスピードを飛躍的に高める技術やサービスを開発・提供しています。主なターゲットは、認知症やうつ、自閉スペクトラム症など、脳と「こころ」に関わる現象を扱う精神医学分野。同社の動物モデルや実験手法が標準化されれば、新薬や治療法の開発が一挙に進みます。さらに、1匹の動物から得られる情報を最大化することで、結果として実験に必要な動物数を大きく減らすことにつながると期待されます。

医学の進歩に欠かせない実験用マウス

 新型コロナウイルスのワクチン開発をする際など、ヒトでの臨床試験の前には必ず動物実験を行います。新しい技術や医薬品の有効性・安全性をいきなり人体で試すのは危険だからです。そこで必要となるのが、ヒトの疾患を実験動物において再現した「疾患モデル動物」。中でもよく使われる動物種が、ヒトと遺伝的に類似性が高い哺乳動物、その中でも体が小さく、繁殖力の強いマウスです。がん、糖尿病、免疫疾患、感染症など、ヒトの疾患の多くは、遺伝子工学や薬剤投与などの方法を適切に組み合わせることで、マウスにおいても再現できることが確認されています。これを疾患モデル動物といい、疾患の発症や進行メカニズムの解明、予防・治療法の研究、新しい治療薬やワクチンの有効性・安全性の確認など、医学の進歩において不可欠な存在です。

物言わぬマウスで「脳とこころの状態」を評価できるのか

 アルツハイマー型認知症やうつ、自閉スペクトラム症などの、脳と「こころ」に関わる現象を扱う精神医学分野でも、さまざまなタイプの疾患モデルマウスが作られています。しかし精神医学分野の場合、モデルマウスの研究は他の疾患分野の場合とは違った難しさがあると、フェノバンス・リサーチ・アンド・テクノロジー合同会社代表の遠藤俊裕さんは言います。

「もともと脳やこころの問題は、他の疾患領域とは違い、客観的指標によって状態を評価するのが難しいのです。相手が人間なら、臨床の先生方は当事者の言葉や表情、行動などをじっくり観察した上でその状態を評価できます。しかし動物とは言葉によるコミュニケーションが成立しないため、研究者は主に行動観察によって対象の精神状態を推測するしかありません。しかし、実験用マウスの観察とそれに基づく精神状態の解釈については、その手法のほとんどが1970〜80年頃に考案・標準化されたもので、約半世紀を経た今まで、あまり技術的進展が見られません。私はこのことが、精神医学研究が遅れている原因だと考えています」

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