洗練されたタンパク質合成技術で創薬をサポート リード開発のプラットフォームを目指す

「PUREfrex®」と、目的タンパク質の設計図となるDNAさえあれば、培養細胞が作りにくい毒性のあるものでも問題なく作れますし、抗体の他にもサイトカインやホルモンなどの信号伝達物質、ペプチドなども作れます。しかも、目的タンパク質やペプチドを迅速かつ簡単に合成できます。そのため「PUREfrex®」は、国内外の製薬会社や大学、研究機関において基礎研究からリード開発までのさまざまな場面で活用されています。

「PUREfrex®RD」で目的のタンパク質を一本釣り

 例えば、あるウイルスに対して有効な抗体の設計図(DNAの配列)を知りたい場合に役立つのが、スクリーニング技術「PUREfrex®RD」です。

「PUREfrex®RD」ではまず、さまざまな配列のDNAを準備し、RNAに変換して「PUREfrex®」に投入します。その後、合成反応を途中で止めて、タンパク質の一部とリボソーム、RNAが連なった複合体(コンプレックス)を作ります。その多種多様なコンプレックスを標的のウイルスと一緒にすると、コンプレックスの中からウイルスにピタリと結合するものが見つかります。そのコンプレックスからRNAを引き抜くことで、目的の抗体の設計図を得られます。

標的(antigen/抗原)はウイルスやがんなど、さまざま。この技術はリボソーム・ディスプレイと呼ばれるので、その頭文字を取り「PUREfrex®RD」と名付けられた。現在、この技術は主に製薬会社がリード開発のプロセスで使用している

「『PUREfrex®RD』を利用することで、候補となるコンプレックスを一度に10の12乗、つまり1兆個作り出すことができます。その中から目的のタンパク質を一本釣りするわけです。この技術コンセプトは20年以上前に報告されたものですが、当時は『PUREfrex®』のような高精度のタンパク質作成技術がなかったので、狙い通りのコンプレックスを作れませんでした。ですからこのスクリーニング法は、『PUREfrex®』があって初めて成立するのです」と海老原さんは言います。

「PUREfrex®RD」を創薬のプラットフォームに

 ジーンフロンティアでは、「PUREfrex®RD」を使ったビジネスを2つの方法で展開しています。1つはコラボレーション。製薬会社などからの依頼を受け、ジーンフロンティアが標的に合致するタンパク質やペプチドを納品するというものです。もう1つはテクノロジー・トランスファー(技術移転)。製薬会社などに「PUREfrex®RD」の特許使用権を許諾し、ノウハウを伝授するとともに契約企業の研究所内で自由に使えるようにするというものです。

 ジーンフロンティアは今後、『PUREfrex®』によるスクリーニングの対象を拡大し、より広い領域をカバーするべく技術開発を進める予定です。将来的には、この技術が創薬における重要なプラットフォームの一つとして世界中で活用されるのが目標です。