東大の優れた技術を世の中に送り出し、実装するのが使命

日本の少子高齢化・労働力不足を補う技術

 コロナウイルスとの関連ではもう一つ、使える可能性があると山本社長が考えている技術があります。舘暲(たち すすむ)名誉教授らが開発したテレイグジスタンス技術です。テレイグジスタンスとは、自分が存在するのとは異なった場所に実質的に存在し、自在に行動するという人間の存在拡張の概念です。離れた場所にある分身ロボットを遠隔地から操作し、自分のもう一つの体のように使います。

 視覚・聴覚情報だけではなく、触覚情報もフィードバックされるため、あたかも自分が本当にその場所にいるような感覚を得ながら、操作することができます。この技術によって、時間や距離の制約を超越することができると、期待されています。

舘暲名誉教授が開発したテレイグジスタンスの技術を元に作られたロボット「TELESAR」https://tx-inc.com/ja/

「ロボットだったらウイルスに対しても安全なので、例えばオリンピック会場で接客しても来場者は安心です。複数の人間が1台のロボットで同時に対応できれば、来場者から外国語で話し掛けられたとき、その言葉をしゃべれる人が応対することもできます」と、山本社長は説明してくれます。

 少子高齢化が加速している日本の労働力不足を補うために、外国人労働力で補うという議論があります。これも、例えば、操作する人がアフリカのどこかにいて、ロボットが埼玉県川口の物流センターに置いてあったとすれば、操作者は昼間、アフリカで働いているけれど、ロボットは真夜中に川口で仕分け作業をしているということも可能です。実作業はロボットが行うので、重い荷物を運んだりする重労働を、人間に代わって担うことも期待されています。

 実際、9月に東京都港区にオープンしたビル内のコンビニ店舗で、店員に大きな負担となっていた商品の品出し・陳列作業をテレイグジスタンス技術のロボットベンチャー、Telexistenceが開発したロボット「Model-T」を使って行う実証実験が始まっています。

SDGsに貢献する技術にも力を入れている

 山本社長は新しく開発した技術を社会に実装する際の、実証実験を行う場所として柏の葉は魅力的だと考えています。

「柏の葉は、実験をするには面白い場所だと思っています。新しい街だし、ある程度自由に実験を設計できます。例えば、柏の葉ではオンデマンドバスの実験をやっています。東京大学のジェロントロジー(老年学)の研究拠点も東大柏キャンパスにあって、高齢者の社会性をどう引き出していくかなどの研究を行っています」