東大の優れた技術を世の中に送り出し、実装するのが使命

 ジェロントロジーもその一環として含まれますが、東京大学では、2017年に総長を本部長とする「未来社会協創推進本部」を設置し、SDGsに関係のある分野にも力を入れています。

 その一例として、山本社長はタンザニアで活動しているWASSHAの例を挙げてくれました。WASSHAは現・代表取締役CEOの秋田智司さんと阿部力也東京大学元特任教授が2013年に共同創業した企業です。

 サハラ砂漠以南のサブ・サハラアフリカでは電化率は35%程度、農村部では19%程度に留まっているといわれています。WASSHAは、東京大学発の「モバイルマネー」技術を活用した、未電化地域での電力の量り売り事業を展開。WASSHAはキオスクに太陽光パネル、ランタン、発電量り売りデバイス等を無償リース、キオスクの店員が携帯で電子マネーをWASSHAに送り、ランタンをお客に貸し出します。現在は、150万人を超えるユーザーがおり、キオスクのネットワークを使ったEコマース事業なども期待できます。

WASSHAは東京大学の「モバイルマネー」技術を活用した電気の量り売り事業と、量り売り事業で築いたキオスクのネットワークを活用した、Eコマースなどの事業を検討しています

 長山智則准教授が、社会インフラのICTソリューションを手掛けるJIPテクノサイエンス社や東京大学生産技術研究所と共同で開発した「スマートフォンを利用した高精度路面評価技術」は、JICAの協力を得て、ケニアの路面評価で実装されています。

 これは、スマートフォンに内蔵された加速度センサー、ジャイロセンサー、GPSなどを用い、路面の形状や管理指標を高精度に算出し、路面状態を可視化する技術です。ドライブレコーダー画像などによる路面の状態の検知と合わせることで、舗装の劣化要因の判定や、補修計画の提案までが可能になるそうです。

 山本社長はTLOを「お見合いのおばちゃん」に例えます。技術の良さをうまく伝え、企業との縁組を進めることで、世の中に送り出すことが使命だと考えているからです。

「ベンチャーを立ち上げるにしても、企業にライセンスを出すにしても、東大にある技術をどうやってコマーシャライズし、世の中に出すかが、私たちにとって一番重要です」

山本社長は、東大にある技術をプロデュースし、世の中に送り出すことが大事だと考えています

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