バイオ×ITで、バイオセンサー「アプタマー」を開発。誰もが手軽に今の自分を知る未来をつくる

NECソリューションイノベータ株式会社
イノベーション推進本部

千葉大学と奈良先端科学技術大学院大学との共同研究で開発されたペチュニア。通常の花と混植した場合の見た目は同じですが(左)、紫外光を当てると蛍光タンパク遺伝子を導入した花のみが光り、メッセージが浮かび上がる。鑑賞用だけでなくIoT化による照明デザイン設計を進めることで、演出が可能なバイオツールの開発の可能性も広げました

さまざまなSI(システムインテグレーション)で社会課題解決のソリューションを提供し続けるIT企業のNECソリューションイノベータ株式会社。同社が東大柏ベンチャープラザのラボで研究を進めるのは、人工核酸を用いたバイオセンサーの開発です。「アプタマー」の作製技術、取得特許数で世界トップクラスの実績を持つ同社は、現在、関心が高まるヘルスケアの分野に、簡便で正確な手法で「健康の見える化」を届けるための、他にはない独自の技術を磨き続けています。バイオとITの融合が生んだ独自技術とは何か。また、社会実用には、さらなる技術の導入が必要で、そのために他企業とのコラボレーションに何を期待しているかも伺いました。

IT企業がバイオを研究。人工核酸「アプタマー」でバイオセンサーを作る

 NECソリューションイノベータは、NECグループの社会ソリューション事業をICTで担う中核企業です。さまざまなSIにより、自治体・医療・金融・製造・建設・物流から小売、1次産業等、幅広い分野の課題解決に協力しています。同社イノベーション推進本部のラボラトリ(ラボ:研究部門)では、各分野の専門領域を持ったチームが複数あり、藤田智子さんが所属するチームはバイオが専門です。遺伝子組み換え技術も使うため、WHOの指針に基づいたバイオセーフティレベルの格付けを持つ研究環境が整備された東大柏ベンチャープラザに入居し、研究を行っています。

 東大柏ベンチャープラザは、全室がP2レベルまでの実験が可能なウエットラボ(研究室)仕様。1階の居室では、耐床荷重2.0t/平方メートル、天井高5m、高圧受電が可能で、簡易な試作工場としても利用できます。

 このラボが得意とするのは「アプタマー」と呼ばれる人工核酸の作製です。アプタマーは、特定の物質と結合できる機能を持つ核酸(DNAやRNA)の働きを応用し、目的の分子を狙い撃ちして「しっかりくっつく」ことができるのです。なぜアプタマーを研究し、作り出すのでしょうか?

「同じような働きをする物質に抗体があります。抗体は、その特徴を用いて腫瘍マーカー、インフルエンザ、妊娠の検査の診断薬として活用され、バイオマーカーとしての役割を担っています。私たちは、抗体に似たアプタマーの特徴に着目し、バイオセンサーとして活用するための研究を重ねています。抗体は生物を介して作る必要がありますが、アプタマーは化学合成で作製可能な人工物です。乾燥させ常温でも保存ができます。安価で扱いやすいバイオセンサーの利活用は、幅広い応用が可能だと考えています」(藤田さん)

 このラボで作製されたアプタマーの機能を見てみましょう。

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