幸福度を指標とし、「健康に暮らせる都市」の条件を見える化する

幸せは生産性を高める

 矢野さんは、「HERO within」の改善を測るアプリケーションを開発。83社、500チーム、4300人の協力を得て実験を行いました。これは毎朝1回、個々にポジティブなことを宣言することで、コミュニティの幸福度がどう変化するかを見える化するものです。3週間続けたところ「HOPE」全ての数値が向上。「心の資本」が33%も向上しましたが、これは10%の利益の向上に相当するそうです。

幸福度の向上は、組織の生産性も向上させます。矢野さんはHAPPINESS PLANETを会社として設立。ハピネス産業、ハピネス地域づくりにも取り組んでいます

矢野さん「これまで幸福は哲学や宗教の話題でした。しかし、幸福度の測定が可能になり、経済性と結び付くことが実証できました。この計測には特別なデバイスは不要で、アプリケーションをスマートフォンにダウンロードするだけ。幸福度がこれからの社会のあらゆる場面で物差しとして活用されていくようにしたい」

 健康に暮らせる街。幸福度の高いコミュニティ。それは「災害にも強い」と近藤さんは東日本大震災の被災地を追跡調査した事例を紹介しました。

近藤さん「災害に強い街というのをソフトの面から見た場合、それはソーシャルキャピタルが強い街と言えます。そうした街では、被災後の追跡調査でも、うつ病になる人が少なく、認知機能の低下を抑えることが分かりました」

 幸福度が見える化する健康や暮らし、コミュニティの可能性は、まだまだこれからも解明が進みます。それには、仮説、実験、分析、検証、評価の繰り返しが大切だと、2人の研究者の視線は一致したようです。最後に「EMPOWER COMMUNITY.」とは、どのようなものか、メッセージをお聞きしました。

近藤さん「コミュニティづくりとは、かき回して何かが生まれる取り組みです。決して打率は高くはない。予測も難しい。だからこそ、人が集まる、人が出会いやすい街に可能性がある。柏の葉の街には、そうなってほしいですね」

矢野さん「街づくりは計画できない。人の出会い、人の思いは予測できません。でも、可能性を信じて場づくりをし、居場所を作り、それをみんなで進めていく。このフェスも含め、柏の葉の街の取り組みに対し、敬意を表したい」

 幸福度を手掛かりにしたコミュニティの可能性は、実際に柏の葉の街で活動する研究者や企業を交えたクロストークへと続きました。

このトークは、動画でもご覧いただけます。この記事は当日の収録内容を再構成し、登壇者の確認を経てコンテンツ化したものです。

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