幸せとは何かを考え、一人一人が豊かな生き方を心掛けることが地球をエンパワーする

 これらの活動の積み重ねが、木更津に昨年オープンしたKURKKU FIELDSに生かされていると、小林さんは考えています。

小林さんは自身が取り組んだ環境問題への取り組みの積み重ねの結果、「いのちのてざわり」を体験する場合として、KURKKU FIELDSをオープンしました

水の恵みを最大限に生かすのが、自分たちの役目

 沖さんは自己紹介代わりに、これまで訪れた場所や、研究に内容についてスライドを用いながら説明しました。「水文学」は聞き慣れない言葉ですが、沖さんは「天文学は天に関わる森羅万象を扱う学問、人文学は人に関する森羅万象を扱う学問、水文学は水に関する森羅万象を扱う学問」と、分かりやすく解説します。

「単に自然科学的な水の循環だけではなくて、人や生物との関わり合いを含めて扱う、というのが水文学の現代的な学問らしいところではないかと、僕は思っています」

 元々は土木で水をどう管理するかというのが、沖さんの専門分野です。人は自然の脅威に打ちのめされてしまうこともあるため、「洪水や干ばつの被害を抑えて水の恵みを最大限に生かすかというのが、自分たちの役目」だと沖さんは言葉を続けます。

水に関する森羅万象を扱う学問である「水文学」を研究する沖さん。人や生物との関わり合いを含めて扱う、というのが水文学の現代的な学問らしいところだと、分かりやすく解説してくれました

 タイに調査に行った時の写真の説明では、2011年にバンコク近郊で起きた大洪水の際に日本企業400社以上が被害を受けた事例を挙げ、実は遠くの国の洪水が、グローバル化した経済を通じて日本に影響している、ということを指摘しました。また、サトウキビ畑の写真の説明では、サトウキビが単位面積当たりのバイオマスの収穫量が多いことに触れ、将来、気候変動対策としてエネルギーを得るために、作物を作ることになる可能性があることを示唆しました。しかし、そうなると膨大な土地と水が必要になり、別の問題が発生するかもしれないとの懸念も、同時に示しています。

サトウキビは単位面積当たりのバイオマスの収穫量が多いため、気候変動対策の代替エネルギー確保のために作ることになる可能性があるそうです。そのために膨大な土地と水が必要になり、食料とトレードオフになるかもしれないと、沖さんは教えてくれました

「気候変動対策でバイオマスを使うというのはいいのですが、そのためにはたくさんの土地や水が必要で、もしかすると食糧の生産とトレードオフがあるかもしれない、という問題も真剣に議論されています」

 沖さんの仕事は、普段はコンピューターの中でいろいろな計算をして、水を取り巻く環境に現在どのようなことが起こっていて、地球温暖化によりそれがどう変化していくかを予見することに費やされているそうです。しかし、コンピューターを使ったシミュレーションだけでは実感をつかめないため、「人間と地球がどう関わっているのかを調査しながら、コンピューターを使って将来を考えている」と説明してくれました。