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【EMPOWER COMMUNITY.】
Part1:近藤克則氏×矢野和男氏
「EMPOWER POSSIBLE.」の4つ目のテーマは、まさに柏の葉の街そのものが舞台となる「コミュニティ」の未来について。地元、千葉大学予防医学センター教授の近藤克則さんは、地域社会におけるヘルスケアの研究に取り組んでいます。健康に暮らす人が多い街の条件として「幸福」に着目。デジタル技術とAI解析で「幸福度」の計測・分析の研究と実用化を進める日立製作所の矢野和男さんに呼び掛けて、このトークが実現しました。医療ジャーナリスト/キャスターの森まどかさんの進行のもと「EMPOWER COMMUNITY.」の視点から都市に暮らす人々の健康に欠かせない「幸福」の視点について、2人の研究者が語り合いました。
千葉大学 予防医学センター 教授 / 国立長寿医療研究センター 老年学評価研究部長
近藤克則さん
千葉大学予防医学センター教授。国立長寿医療研究センター老年学評価研究部長として、予防医学の観点から地域社会における健康増進の研究に取り組む。
株式会社日立製作所 フェロー、理事 未来投資本部 ハピネスプロジェクトリーダー/株式会社ハピネスプラネット 代表取締役CEO
矢野和男さん
株式会社日立製作所フェロー、理事兼未来投資本部ハピネスプロジェクトリーダー。株式会社ハピネスプラネット代表取締役CEOとして、人工知能などの最新テクノロジーを用いてワーカーの幸福度を可視化、増幅促進に取り組む。
暮らすだけで健康になれる。「ゼロ次予防」を実現する街づくりの条件が見えてきた
近藤さんは、全国64の市町村に暮らす25万人超の人々の協力を得て「健康とくらし」について調査を重ねてきました。研究当初は個々人のデータから「健康な人の生活条件」に目を向けていましたが、「街」に視点を向けると意外なことが見えてきたそうです。
近藤さん「認知症として要介護認定を受ける確率を街ごとに比較すると4倍もの差があったのです。介護認定の基準に市町村ごとの差があり、それが影響しているのではないか? あらためて前期高齢者への質問紙によるアンケート調査で精査しましたが、やはり3倍ものリスクの差があることを確認しました」
私たちは、認知症は加齢に伴う避け難い病気で、高齢化社会で増えていくことを当然視しています。しかし、やはり高齢化が進む欧米の社会では、ここ10年間で認知症になる確率が1割から2割も下がっているそうです。近藤さんによれば、生物学的な理由では説明できない値であり、何か社会的・経済的な環境要因による影響が考えられると言います。その要因が分かれば、予防や健康増進に役立てることができます。こうした根本的な健康への取り組みは「ゼロ次予防」と呼ばれています。
では、健康な人が多い街の要因とは何か? 近藤さんは膨大なデータから「幸福」に着目しました。「幸福感がある」と答える人の割合も、地域で大きく差が見られたからです。
近藤さん「4割を切ってしまう所もあれば、5割を超える所もありました。その差が生まれる関連要素を探ると、社会参加がしやすい街が条件として分かってきました」
このコミュニティ内の「幸福感」の度合いを、テクノロジーで測り、研究に取り組んできたのが日立製作所の矢野さんです。