幸せとは何かを考え、一人一人が豊かな生き方を心掛けることが地球をエンパワーする

クロストーク
【EMPOWER EARTH.】
小林武史氏×沖大幹氏

環境問題や被災地支援に長年取り組み、食を切り口にサステナブルを考える場としてKURKKU FIELDSをオープンした音楽家の小林武史さん、グローバルな水循環と世界の水資源、気候変動影響評価と適応策などの研究に取り組む東京大学教授の沖大幹さんが登場したクロストーク。一人一人が豊かな生き方を心掛けること、幸せとは何かを考えることが、「EMPOWER EARTH.」につながると語ってくれました。

音楽家、ap bank代表理事

小林武史

音楽家。1980年代から音楽プロデューサーとして活躍。2003年にMr.Childrenの櫻井和寿氏、音楽家の坂本龍一氏と環境プロジェクトにマイクロファイナンスを行う非営利組織「ap bank」を設立。2005年にサステナブルというコンセプトを社会で実践する場として、レストラン、カフェ、オンラインショップなどを運営する「kurkku」を設立。食を中心に、生きるということの本質的な喜びを提供する場として、千葉県木更津市にKURKKU FIELDSを2019年11月にオープン。太陽光発電所を設置して電力を自主生産するなど、自然エネルギーや食の循環に関する試みを実践している。

東京大学工学系研究科教授
国際連合大学上級副学長

沖大幹

東京大学工学部卒業、博士(工学、1993年、東京大学)、気象予報士。東京大学生産技術研究所助教授、文部科学省大学共同利用機関・総合地球環境学研究所助教授などを経て、2006年東京大学教授。2016年10月より国際連合大学上級副学長、国際連合事務次長補も務める。地球規模の水文学および世界の水資源の持続可能性を研究。気候変動に関わる政府間パネル(IPCC)第5次報告書統括執筆責任者、国土審議会委員ほかを務める。

これまでの活動の積み重ねがKURKKU FIELDSに結実した

 11月1日のクロストークには、環境問題や被災地支援にさまざまな角度から取り組み、昨年11月に食を中心にサステナブルを体験・実践する場としてKURKKU FIELDSをオープンした音楽家の小林武史さんと、東京大学工学系研究科教授で、グローバルな水循環と世界の水資源、気候変動影響評価と適応策などを研究している沖大幹さんが登場。「EMPOWER EARTH.」をテーマに、医療ジャーナリスト/キャスターの森まどかさんの司会で、持続可能な社会実現に向けて語り合いました。

 冒頭の自己紹介で小林さんは、環境問題に取り組み始めたきっかけは、2003年にMr.Childrenの櫻井和寿氏、音楽家の坂本龍一氏とともに環境問題に取り組む個人やNPO団体、法人に融資を行うap bankを立ち上げたことだったと振り返ります。その後、ap bankの融資原資や活動資金、環境関連プロジェクトを推進する資金を得るために野外音楽イベントap bank fesなどのイベントも立ち上げ、現在も続けています。

「環境の問題、そして何より未来に対して、それぞれの方々の思いは多様です。それを共鳴させたり、共振させたり、実感に響くことを、僕たちは心に直接訴え掛けることを仕事にしているので、大切にしながら活動してきました」

環境問題に取り組む個人やNPO団体、法人に融資を行うap bank立ち上げをきっかけに、環境問題に深く関わるようになった小林さん。ap bankの融資原資や活動資金を得るため続けているap bank fes などの音楽活動に加え、Reborn-Art Festivalを始めたことで、アートを持ち込むと、長い期間地域に入っていけることが分かったそうです

 2017年に小林さんは、宮城県の石巻市と牡鹿半島を舞台にした「アート」「音楽」「食」のお祭り、「Reborn-Art Festival」を立ち上げます。「被災地の中から復興できる力を作りたいという」という思いから取り組んだ事業でしたが、ap bank fesという音楽フェスティバルの3日間という開催期間に比べ、現代アートを中心とするアートを持ち込むことで、長い期間にわたって地域に中に入っていけることが分かった、と言います。

「アートの領域というのは、音楽のように一つになって盛り上がる、一つになる力というものとは違う。一人一人が同じ仲間で行っても、アート作品やそれを取り巻く自然環境などの中で、それぞれ多様な出会い、自分自身との新たな出会いを作っていけるということも、Reborn-Art Festivalを通して学んだことでした」

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